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小説3 キューボール

ビリヤードの発祥は様々な説がある。

 5000年前のエジプト時代の壁画には、棒で球を突いたり押したりしてゲートを潜らせている姿が描かれている。

そして、18世紀のイギリスで長方形のテーブルに穴が6つ開けられた姿となり、近代ビリヤードの原型ができあがったのだ。

 

緑色のイングリッシュ・ビリヤードのラシャは毛足が長く、室外の芝をイメージしてつくられたという説がある。

そして米国や欧州でビリヤードが流行りだし、ラシャはブルー、茶系、赤系など多彩な色調で世界に広がっていったのだ。

・・・・・・

 

 

町田と小笠原はビリヤードゲームを続けていた。セットマッチ形式でお互いにレベルが近いことを知ると勝負はシーソーゲームのようになった。

二人がゲームを通じて親交を深めていくのは自然の流れだった。

 

 額に汗をかいた小笠原が言った。

「町田さん、そろそろラストゲームですね」

「そうだね、ところで小笠原くんはプロなの?」

町田はサイドテーブルに置いたハイネケンのビール瓶を持ちながら言った。

 

「ええ、一応資格だけは持っているんですが食べていけなくて・・・」

「そうか?本業?えっ副業がビリヤードなの?」

「いやぁ~、・・・ははは、でも町田さんもプロ並みの腕ですけど・・・」

「いや、僕はプロ資格なんて持ってないよ。アメリカに暫くいたから沢山プレイして覚えたんだ、アメリカやドイツではメジャーなんだけどなぁ、賞金もそこそこ高いし」

 

小笠原は米国で腕を磨いたという町田の話を聞いて興味を持った。

「僕はプロと言っても世界で賞金稼いで暮らせるほどの腕じゃないんですよ・・・あははは」

「小笠原くん、チャレンジしなよ!世界でさ!」

 

「ダーツ・プロなら食べていけるかもしれないですね、今からダーツ覚えようかな・・・あはは」

「ダーツか?いいかもね、東南アジアではビリヤード中心だからダーツは新鮮に感じるかもしれない」

「はい、僕もそう思うんです!」

 

二人は真剣勝負というより久しぶりに本気でビリヤードをプレイして、仲間ができたことを心底喜んでいた。

 

「じゃあこのセットが最後のプレイだね」

町田は優しそうな表情で言った。 

 

このラストセットでゲームの勝敗が決まる。

 

小笠原は先程からこちらを見ている視線が気になっていた。

 

視線の先はシンガポール・スリングが赤く光っている。

そのテーブル席には女性が一人座っていた。瞳が綺麗な女性だ。

彼女の長い髪と革ジャンがプールバーの光で揺れて、不思議なデザインを創り出していた。

 

小笠原はブレイクショットを豪快にストロークした。

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