流星 おがしゃのブログ

冒険という夢を追いかけて世界を旅しています。いつしか世界中を巡り自分の居場所を探し出したいと考えています。 

旅すること

人生で一番幸せな時の流れ

小説4 キューボール

4

5000年前のエジプトは文明が栄え、科学も発達していた。

多くの人々は豊かな暮らしの中で退屈しのぎにボードゲームのセネトに興じていた。

現代のチェスとパズルを組み合わせたような「知能を争う」ゲームである。

 

勝者は国の賢者として崇められていた。

また一方では「体力を競う」ゲームも盛んに行われていた。

 

しかし、敗者は過酷な労働による死という罪を負わされ、エジプトの地は怨念という魂で次第に支配されていくのだった。

 

そんな中で死罪のない知的で体力も兼ね備えたゲームが次に発案されていった。

近代のビリヤードの原点であるボールゲームだ。精神力と体力そして戦略を兼ね備えていなければ勝てないゲームである。

 

 

 

・・・・・

 

野沢加奈枝はハーレーに乗って東京へ向かった。

彼女は実験室で再生技術を成功に収めた。そのプロセスデータをスマホからセキュア通信にてクラウドに送り、人工知能解析にかけていた。短時間で大量に生産できる細胞分裂方法のシミュレーションだ。

 

首都高から新宿方面へハーレーは徐々に速度を緩めていった。

新宿は金曜日ということもあって酔ったサラリーマンで賑わっていた。ネオンそしてお酒は、いつの世も人々を惑わす。5000年前のエジプトの灯りと同じように・・・

 

ハーレーは青梅街道から中野方面に走っている途中、救急車と消防車がけたたましいサイレンと共に反対車線を通り過ぎていった。新宿歌舞伎町の盛り場には男と女のトラブルが絶えない。そして、西口の都庁をはじめとした高層ビル群には深夜まで明かりが点り、仕事を続けるエリートと言われる人々が生きている。

 

表と裏、富と貧。それが新宿という街をバランスよく創り出しているのだった。

 

時折、新宿の高層ホテルで飛び降り自殺がある。その原因は新宿という街が創り出した闇なのか?神は人間が天空近くで暮らすことを許してはくれないのか?という意味のように、高層ビルで働き、暮らす人々は徐々に病んでいくのだった・・・。

 

・・・・・

 

彼女はバイクをマンションの地下に乗り入れた。

駐車場入口のセキュリティシステムは彼女のIDカードを認識してゲートを開場した。

 

野沢加奈枝はヘルメットを脱ぎ、サイドミラーで自分の顔を見る。

長い髪がヘルメットから流れ落ち、瞳が一瞬青く光ったように見えた。

 

彼女はマンション駐車場から部屋に入ることもなく、革ジャンとデニムそしてライダーブーツの格好で外に出ていった。

 

道中、彼女は心の中で独り言を呟いた。

 

「東京はもう葉桜なのね」

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