流星 おがしゃのブログ

冒険という夢を追いかけて世界を旅しています。いつしか世界中を巡り自分の居場所を探し出したいと考えています。 

旅すること

人生で一番幸せな時の流れ

小説6 キューボール 

6

 小笠原吉行はお辞儀をするように体を前に倒し、ビリヤード台に顎が付きそうなくらいに近づけイマジナリーポイントを見つめていた。

小笠原は理系の大学院を卒業した後、外資系企業の研究所に就職した。彼は人工知能用アルゴリズムの開発をしている。彼は自宅でも仕事ができる環境にあって会社には気が向いた時に出社して仲間と談義の時間として使っている。スーツを着る必要もなく満員電車に乗る必要もない、普通の会社員から見れば羨ましい環境で比較的自由に働いている。しかし、結果を出しているからであって現実は厳しい成果主義の中で生きているのだった。

 

小笠原はセーフティショットを選択した。

 

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キューボールはゆっくりと12番ハイボールに触れた、相手に手を渡すために。

 

町田はテーブル席で小笠原が視線を感じた綺麗な女性と座っている。

「ああ!町田さん、ズルいですよぉ。町田さんの知り合いなんですか?」

町田は照れくさそうな顔で応えた。

「ごめんごめん!彼女とはここで待ち合わせしてたんだ。紹介するよ。えっと名前は野沢加奈枝さん! 僕の友人だ」

小笠原はテーブル席に着いてグローブを外し挨拶する。

「あっ、はじめまして!ぼく小笠原です。小笠原吉行と言います」

「はじめまして、野沢です。よろしくね」

三人でテーブル席に着くと、オーナーの柏木が三人にドリンクを奢るということで挨拶に来た。

小笠原が紹介する。

「こちらがこのお店のオーナーの柏木さん、いつも僕がお世話になってて、バイトもたまにさせてもらってるんですよ」

「柏木です。町田君とのプレーを見させていただきました。お二人がプレーする姿は実に美しい、私も昔を思い出しましたよ。観客も増えますからね、ごゆっくりしてください」

柏木はタキシード姿で白髪の髭を生やしたジョージ・クルーニーに似ている。

 

三人でドリンクが揃ったところでワイングラスを鳴らす。三人ともワインをオーダーしたのだ。

「じゃ、カンパーイ!」

「ところで町田さん、ゲームの続きどうします?」

小笠原がセーフティショットした状態で止まっている。

「ああ、僕が次でも多分、手詰まり状態で再ゲームとなるよね、ここはゲーム代含めて全部支払うから勝負は次回に持ち越そうよ」

「えっ悪いですからゲーム代は割り勘にしましょうよ」

野沢が口を挟む

「小笠原さん、町田さんはお金持ちなんだから奢ってもらいなさいよ、あはは」

「そうですか、すみません町田さん、えへへ」

「でも僕は大金持ちじゃないよ~ あはは」

三人で嗤った。

 

プールバーにはいつの間にか外国人が多く入っていて賑わいを増していた。

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