流星 おがしゃのブログ

冒険という夢を追いかけて世界を旅するフラッシュパッカー ゼロからのブログ

キューボール #2 生物研究所での実験

 野沢加奈枝は、つくばみらい市の日本化学生物研究所で実験をしていた。医学博士号を持つ彼女は、ほぼ毎日を自分の研究室で過ごしている。

 

 彼女の容姿は凛とした美しさが漂っていて、白衣が更に女優のような容姿を際立たせていた。米国のハーバード大学で再生医療を研究していたエリートでもあるため、声をかける男性は研究所内でも限られていた。

 

「先生、今日は金曜日ですよ〜 デートとかないんですかぁ〜」助手の今村彩花が、時計をちらりと見ながら声をかけた。

「あぁ! 彩花ちゃん、ごめんね、もうあがっていいよ。私はもうちょっとだけ仕事して帰るから、デートでしょ!楽しんできてね」

「先生、先は長いんですから根詰めたらダメですよぉ〜、じゃぁ、帰りますね〜、お疲れ様で〜す」彩花は舌を出して照れたような仕草で研究室を出ていった。

 

 独り研究室に残った彼女は深いため息を漏らした。そして静まり返った研究室で彼女は顕微鏡を見つめていた。

 

 フラスコでお湯を沸かし紅茶を淹れる。研究室の窓から星空を眺め、ぼんやりとしながらVAPEを燻らせた。

 1時間程して顕微鏡を覗くと細胞に緑色が光りだしていた。そして独り言をつぶやく。

 「ついに分裂が成功したわ」笑顔は一瞬で消え再び険しい顔になる。

 彼女は顕微鏡からPCに記録されたデータをフラッシュメモリーカードに移行し、自分のスマホにセットした。同時にPCに記録されていた実験データを全て消去し、細胞を焼却装置にシャーレごと入れてスイッチを押した。

 

 彼女は白衣を脱ぎ革ジャンとデニムに着替え研究所を出た。

 

 研究所の守衛は彼女の乗ったハーレーダビットソンに敬礼し、スイッチを押して門を開けた。

「お疲れさまでした!」

「お疲れさま!」彼女は笑顔で応えた。

 

 ハーレーに乗った野沢は研究者用住宅ではなく高速道路に向かって走った。月が照らす道沿いには桜のソメイヨシノが咲いている。そして走り去るハーレーの後方では桜が散っていた。

 

 流星が夜空にいくつも流れた。そのひとつの流星は激しい光を放ちながら地上に接近していた。激しい衝撃で筑波山の近くに落ちた。流星が墜落した衝撃で周辺の桜の木が倒れていた。

 

 彼女は流星に気づく様子もなく高速道路から東京に向かってバイクを走らせていた。 

 

 桜は優しく彼女を見つめている。

 

 江戸時代中期に桜のソメイヨシノはエドヒガシとオオシマザクラを掛け合わせて創られた園桜。花が咲けども種が育つことがない・・・・・・ クローンのように接木によって現世に生かされている。