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キューボール #11 函館 名人戦

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 函館、五稜郭の桜のつぼみが少しづつ咲いてきて、1600本のソメイヨシノが開花の準備をしていた。星型の土塁に植えられた桜は人々を圧巻させる。早咲きのソメイヨシノが暖かい気温によって開花していった。

 

函館の高級ホテル「望楼ー函館」では将棋の名人戦が行われていた。

 

  • 佐藤天彦名人 対 羽生善治三冠

 

 何度も二人の対戦が行われている。佐藤名人は後ろ髪を手で何度も掴みながら盤上を眺める。対する羽生三冠は右手を額に当て体を前後に揺らしている。それぞれの癖が現れる。頭脳戦はエネルギーを消耗するのだ。

 横歩取り戦法を得意とする佐藤名人が少し有利な展開を見せていると大盤解説者が話している。ホテル内には大勢のファンが大盤解説会場に詰め掛けていた。コンピュータのポナンザは互角と数値を表示している。

 もうすぐ昼食休憩だ。二人の棋士が「何を食べるか?」という予想問題が出されていた。

 

 ホテルのロビーには彩花と一巳の姿があった。

『名人戦が行われてみたいだぞ』

『何ですか? 名人戦って?』

『将棋のことさ、一年間A級クラスの棋士が戦って1位が名人への挑戦権を得られるんだ』

『へぇーそうなんですか。一巳さん詳しいじゃないですか?』彩花は全く興味を示さずに周囲に目をやりながら話した。

『多少、俺も将棋の覚えがあるんだ。ああ、面白そうだな』

『ダメですよー! これから重要な情報を受け取らなきゃいけなんですからねー』

『あっ、ランチメニュー予想クイズだ。何食べるのかな?天彦名人と羽生さん。アヤカは何だと思う? 俺は天彦名人が函館の「三色丼」で、羽生さんが「天ぷらのない天ぷらそばだ」と思うんだけどな』

『天ぷらのない天ぷらそば? 何んですかーそれ!』

『俺たちもランチしようよ。せっかく函館に来たんだからさ。美味しいもん食べていこう』

『一巳さん! 私たちは観光に来たんじゃないんですよ! 全くもおー』彩花はふくれっ面をしながらもレストランへと一巳と足を向けた。

『やっぱり三色丼は食べておかなきゃな』一巳が笑顔で言う。

『三色丼、三色丼・・・サンカン? サンカン?』彩花は童心に返ったような笑顔になった。

 

 函館のホテルは外国人で溢れかえっていた。まるで国際交流会場のように多数の民族が様々な言語で話している。将棋の大盤解説会場にも多くの外国人が詰め寄せ、かえって日本人の方が少ない印象であった。

 

 人工知能は既に人類の頭脳を超え、チェス、囲碁、将棋のプロ世界でも太刀打ちできない力を持った。新たな定跡が将棋界にも生まれた。棋士が考えもしなかった人工知能の手を研究することが潮流となったのだ。