流星 おがしゃのブログ

冒険という夢を追いかけて世界を旅するフラッシュパッカー ゼロからのブログ

キューボール #14 シャンチーと上海蟹

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 象棋と書いて「シャンチー」と呼ぶ。中国の国家正式スポーツとなっている。

世界で最大の愛好者数を誇る競技だ。チェス・象棋・将棋はインドのチャトランガを起源とされている。ルーツのインドから様々な国へ伝わり、国民性に左右されてルールが変わっていったゲーム。日本の将棋は取った相手の駒を再び盤上に使えるという特殊性、複雑性極まるゲーム要素を進化とともに備えた。従って将棋は一手で逆転することもあり、チェスや象棋は千日手として引き分けになる場合が多いのである。

 

 上海の魯迅公園では象棋をしている人を囲って大勢の人が観戦している。公園の日常的風景となっている。市民の楽しみは象棋の対戦と観戦となっているのだった。

 

今村彩花は蒸した上海蟹を食べていた。

『やっぱり美味しいですねー』

『ははは、なんか観光になっちゃったな』一巳も頬張っている。

『観光じゃないですよー、ここでも情報を集めて謎を整理しようってことなんですよー』彩花は紹興酒を口に運びながら言った。童顔女子の彩花の顔が少し赤くなっている。

 『そうだな、野沢博士がなぜロシアに行かなければならないのかを考えないと。それからもう一人の謎の人物だ。彼が何を目的に行動を一緒にしているのかも』彩花はレンゲに乗せた小籠包を箸で割って肉汁をすすりながら言った。

『そういえば博士は、この研究は人類のためになるのかしらって呟いてたことがあったの、もしかして研究を終わりにしたかったんじゃないかしら?』

『アヤカ、研究者はそんなこと考えないよ。自分の研究成果を求めるもんさ。例えその研究が最終的に兵器として使われてしまってもだ。だから、野沢博士が途中で自分の研究を終わりにすることはないさ』

彩花は箸を置いてしばらく考えていた。

 

『人工知能、そう博士は人工知能に速度をなんとかとか言っていたわ』

『博士と一緒にいる小笠原という人物は人工知能の天才的開発者らしい。ということは人工知能を活用して実験成果を拡大させたいのかもしれない。その成果がどこかの国の軍事研究に渡るよりはと考えたとしたら・・・・・・

『戦争への抑止力になるわね、生物兵器として活用されることを知ったとしたら・・・・・・

 一巳は紹興酒のグラスを一気に飲み干した。そして少し咳き込みながら言った。

 『アヤカ、野沢博士は生物兵器になるような研究をしていたのか?』

『再生医療技術よ、でも培養ウィルスによって細胞分裂速度を上げる研究でもあるの』

『SF映画で見たことあるけど、数時間であらゆる細胞が修復再生されるようなもんか・・・・・・

『プラスの作用もあればマイナス的な要素も持つわ、一瞬で細胞を破壊してしまうことだって・・・・・・そう、可能になるのよ』

 

 上海の夜は更けていった。上海の夜景には象棋をしている人達の銅像がスポットライトを浴び、今の中国軍を象徴するような陣地取りゲームのような光景が映し出されていた。

 今の世界はアメリカとロシアが険悪な関係にある。中国も軍事化路線で軍事施設を拡大させている。中東は宗教戦争が続いていて、いつ何がどこで起こっても不思議ではない。諜報員としての彼らもこの平和がいつまでも均一性を保って続いてくれることを願っていた。