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騎士団長殺し 第2部 遷ろうメタファー編 村上春樹

物語は地下時空の闇へ

「騎士団長殺し」村上春樹を第1・2部を読了した。

 

主人公の氏名は不明だ。私や先生、「ぼく」という表現で展開する。

かなり珍しい小説に分類されるかと思う。新ジャンルを生み出している。 

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新たな登場人物

  • 顔なが 身長70cm「騎士団殺しの絵画」に描かれた四角い箱から首だけだしている男
  • 顔のない男 長身で川を渡る船を操る
  • ドンナ・アンナ 身長60cm「騎士団殺しの絵画」に描かれた美しい女性
  • 室 主人公の妻「柚」の娘 仮説的な主人公の娘

 

ハルキストにとって待望の長編小説が7年ぶりに書下ろしで世に出された。

絶賛に値するかと思う。

代表的キーワード

  • 井戸
  • 料理
  • 音楽
  • 謎のファンタジー人物
  • お酒(ウィスキーとワインとカクテル)
  • 性的描写と時空を越えた妊娠

 

村上春樹には子供がいない。

猫と写真好きの(上手いとはお世辞にも言えないが)奥さんがいる。

少くとも最愛の人だ。(「少なく」を「少く」という村上表現・1部P76参照)

 

村上ワールドは描写表現が豊かすぎて返ってまわりくどいかなと些か閉口することもあるのだが、本作品の最終的なストーリーには緻密な設計が至る所に散りばめられており、まるで江戸時代のからくり人形のような感覚を読了後に心に残した。

 

不思議な感覚を覚える。そして、いつもなら疑問は疑問として残されてしまった読者を放って置かれることが多いのであるが、幸せな結論で締めている。ノーベル文学賞で毎年話題になる彼であるが、いつも新しいジャンルに挑戦していることが判るだろうか?

 

つまり、顔を持たない作家であることを。

 

彼の旅記録を読んでいる人は少ない。イタリアで書下ろした代表作の「ノルウェイの森」は映画化もされた。しかし、日本の男性でこの小説を絶賛する人は少ない。ましてや教科書に掲載された短編小説を理解できるような子供は少ない。全てが難しいという表現で読み進めていく中で情景が判らなくなるからだ。

 

翻訳作家としての存在も大きい。彼の翻訳作品は多いし、非常に小説家としての読者に配慮した表現で日本人にわかりやすい語彙を選択して使っている。

 

世界で村上作品が読まれる理由は、翻訳でのわかりやすい「語彙」を選択しているからだ。難しい表現を使っているのは日本語であることを知っていただろうか?

 

世界はわかりやすくて物語がスーッと脳に入ることを望む。決して情景を難しい表現でポエムにすることを望んではいない。理解不能なポエムはその価値を高めて解説を読むごとに深みを増す。しかし、解説者の言葉はあくまでも「解説者」の見解なのだ。

 

作者は本当のことを言うと評価は自分の中で世に出す前からソウゾウしている。売れるか売れないのかというソウゾウのことだ。売れなくても自分の納得している作品はある。売れれば嬉しい経済力が手に入る。ただ、それだけのことだ。

 

構想を考え、静寂な漆黒の部屋でパソコンのキーを叩き続けては深い溜め息を海辺のリゾート地で漏らす。近くのソファーで眠りに就いてはウィスキーグラスを探る。そして、構想アイデアが突然湧き出した途端にパソコンにメモを取って再び執筆にかかる。その繰り返しの中で「ひとり孤独」に小説は生まれていく。

 

自分を描写して天空で暮らす他人のような主人公を創り上げていく。

 

それが小説家なのである。

 

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