タイ 不思議な魅惑を人々に与える王国
タイという王国を訪れてから魅了された。
幼い頃の想い出と初めて訪れたタイのプーケットが重なり合う。
ゾウが自然にホテルの道を歩き、豊富なフルーツが散りばめられ、やさしい鳥の鳴き声が聞こえる。
タイには心の何処かに懐かしさと優しさを感じる。
そして、数十年が経過した。
世界恐慌の中で日本社会から逃れたいという自分がカオサンというバックパッカーの聖地に降り立った。
チャオプラヤー川を船に乗りながら心が自然と溶け合っていくようになる。
沸き立つ嬉しさが心の隅から湧き上がる。
自由を失い、自ら心を閉ざした社会から開放されていくような気持ちだった。
人々の笑顔と優雅な時が流れていく中で、苦しみと悲しみで氷の塊のようになった心がゆっくりとゆっくりと解けていく。
それから更に10年近く旅を続けてきた。
周辺国を訪れ、タイに戻る度に安堵感が広がった。
ここは自分の故郷なのかもしれないと思った。
田舎に行けば行くほどタイという国が好きになる。
人懐っこい笑顔はやがて自分自身の中に入り込んでいった。
ここで生きていきたい。
旅をここで終えたい。
騒がしく淀んだ心になった都会から離れ一人になる。
そこには目の前に疲れきった自分がうなだれてソファにいる。
時々うめき声を上げて涙を拭いている自分がいた。
都会から少し離れたコンドミニアムからウィスキーグラスを片手に夜のチャオプラヤー川を眺めた。
自然と涙が溢れる。
それは心からの喜びの涙だった。
明日、旅立つ。